HOME  >  COLUMN  >  バーズワーズの工房案内「鳥たちが生まれる場所」

バーズワーズの工房案内「鳥たちが生まれる場所」

伊藤利江とともに働く制作スタッフへのインタビュー

バーズワーズは2009年、陶芸作家の伊藤利江と、夫であるディレクターの富岡正直によって始まりました。大阪の街中にある小さな工房から始まったバーズワーズには、この数年で少しずつスタッフが増えてきました。今回はその工房への訪問と、そこで働くスタッフとのお話です。

陶芸を始めたきっかけ

BIRDS’WORDS(以下 BW):では、皆さんにお話をうかがいたいんですが、まずはそれぞれ陶芸を始めたきっかけをお聞きしたいです。

スタッフ和田さん(以下 和):大学受験の時ですかね。特に高校時代の時から陶芸がしたいという感じじゃなかったんですが、大学を決める時に、何がやりたいかって考えた時に陶芸がやりたいなと思ったんです。

BW:それまでは陶芸はされてたんですか?

和:全然してないんです。

BW:そうなんですか、意外ですね。

スタッフ國友さん(以下 國):私も同じ感じなんですよ。立体がやりたいなとは思ってたんですけど、彫刻のイメージではなかったので陶芸を選びました。

BW:それまでに陶芸の経験は?

國:なかったですね。

スタッフ舞子さん(以下 舞):私は高校が美術に特化した学校だったので、そこで日本画を専攻していたんですが、日本画があまり向いていないかなと思って平面から立体に移行したんです。器のようなものが作りたいなと思って陶芸を選びました。立体のコースも高校にはあったんですけどそちらでは選んでなかったんです。私もそれまでは陶芸をしたことがなかったんですよね。

スタッフ松本さん(以下 松):みんな同じタイミングですね。私は高校を出たあとは専門学校に入り、途中から大学に編入しました。高校で次の進路を決める時に、美術系に進みたいと決めてから陶芸を選びました。彫刻とすごく悩みましたけど、陶芸の方が直接的に触って形に出来る、小さい頃からしてきたことのイメージに近かったのかなと思います。

BW:それまでに何か作るような事をしてたんですか?

松:特別どこかで習っていたとかでは無いですけど、学校で習う授業の中では美術や技術が好きでした。

BW:他の皆さんもそのあたりの授業は好きだったんですか?

和:国語や数学なんかの他の授業よりは得意だった気がしますね。

松:なんか気分違いましたよね、そういう授業は。

column04-image02

働き始めたきっかけと、作家・伊藤について

BW:みなさんバーズワーズで働き始めてどれくらいですか?

和:私は、もうすぐ丸5年くらいかな。バーズワーズは初めの1年ほどは伊藤さんと富岡さん2人でしてましたから、入ったのは出来てから2年目からですね。

松:そんなに長いんですね。

BW:以前はどんな仕事をされていたんですか。

和:以前はどちらかというと彫刻のような仕事でした。粘土で立体を作ったりしてましたね。素材は似てますけど、やっている事は全然別ですね。前の仕事が少しきついと思い出した頃に、伊藤さんに手伝ってほしいと声をかけられたのがきっかけです。勢いで決めましたね。

BW:伊藤さんとは同級生でしたよね。

和:そうですね、大学でずっと仲良くしてたんです。伊藤さんは大学院へ行きましたが、私は卒業して就職しました。

BW:長いお付き合いですね。國友さんは入られてどのくらいでしたっけ。

國:半年くらいですね。大学の頃にgrafでの展示を見て初めて知ってから伊藤さんにすごく憧れていたんです。大学を出てからは陶芸の仕事をしていたんですが、結婚を機にやめて以来離れていました。そろそろ仕事を始めようかなかなと思った時に偶然ここでの求人を見つけたんです。

松:すごいタイミングですよね。

國:そうですよね。伊藤さんに会えるだけでも嬉しいと思って応募しました。

舞:私はもうすぐ2年くらいですかね。もともと職場が一緒だった松本さんに紹介してもらったのがきっかけです。募集してるけど来てみないかと。

BW:松本さんのきっかけはなんだったんですか?

松:きっかけは知り合いの紹介でした。その知り合いはお店をしていてそこで仲良くなったのですが、そのお店で初めて伊藤さんの事を知って、自分が陶芸をしている事は話していたんです。ある時バーズワーズの工房で人を募集してるけどどうですかと連絡が来たのはもう3年くらい前のことですかね。初めは陶芸教室との掛け持ちでした。

舞:あたしも伊藤さんの作品は、松本さんと行ったそのお店で知りました。伊藤さんやバーズワーズの知識はあまり無かったですが、作品は自体は知っていて、鳥のモチーフを作っている作家さんがいるんだなという程度でした。仕事を紹介された時には、陶芸の作品制作で仕事ができるんだなーと驚きましたよ。

BW:そういう仕事が少ないという事ですか?

舞:そうですね、少ないですよ。

松:窯元などに行かないとなかなかないですね。

舞:初めは伊藤さんという人をあまり知らずに入ったので、作家さんだから気難しい方かなとか思っていたんですけど、ざっくばらんな感じで話しやすいしさっぱりしていて。でも芯はしっかり通っているので、譲らない部分は譲らないだとか、すごい方だなと思います。あと、作り出したらものすごく早い所がすごいと感じますね。

和:仕事早いですよね。

BW:手が早いという事ですか?

舞:手もですけどロスが本当に少なくて。

松:私も作家さんのイメージが勝手にあって厳しい人かなと思ってたんですが、伊藤さんは本当に気さくで。あと、入る前はアシスタントだけの仕事かなと思ってたんですけど、ベースはもちろん伊藤さんの石膏型ですが実際にこうして作る事をある程度まかされていて、そこも想像と違って働きやすかったです。自分でデザインしたものが商品になるというのは本当にすごい事だと思うし憧れますね。素敵な仕事だと思います。

國:私の印象は憧れですね、作品に出会ってから今までずっとです。

column04-image03

思い入れやこだわりのあるアイテム

BW:制作していて思い入れやこだわりのあるアイテムはありますか?

和:私が今までに一番多く作っているのはWALL BIRDですね。ただ一番苦戦するのはBIRD TRAYです。本当に今まで何個つぶしてきたか分からないくらい。

BW:BIRD TRAYはそんなに難しいんですか。

和:乾燥させている時にものすごく歪みやすいんです。うまくいくものもあるんですが、どういう過程でその差が出るのか分かりにくくて、人に教える時も本当に難しかったです。経験してる全員苦戦してますよね。

松:私も思い入れはやっぱりBIRD TRAYですね。教えてもらって作り始めた時は歪み無く奇麗に出来たんですけど、数を作り出してから突然亀裂が出来たり歪みだして…。なにがきっかけなのかまだ分からなくて、作っていく中で試行錯誤して考えて、いろいろと記録をとってみたり…。

BW:大きいのでWALL BIRDの方が歪んだりへこんだりしやすいのかと思ってました。

和:WALL BIRDもなる時はもちろんなるんですけど、数的には全然違います。WALL BIRDは土の量が多いので、土を準備する時は大変ですけど、その後の行程自体は他の物と同じなので差は大きくないですし、表と裏を合わせる形状は安定しやすいんです。BIRD TRAYは本当に難しいですよ。作るという部分で好きなのはWALL BIRDですかね、いっちんとか。いっちんの模様付けの時は無心になりますね。

他で言うと、人にプレゼントするのによくPATTERNED CUPを選んでますね。

國:私はflower tile broochのDとbird tile broochのAがデザイン的にも好きですね。

BW:形で作りやすさもかわったりもするんですかね。

國:flower tile broochのDは作りやすい気がします。

舞:私が好きなのはbird tile broochのMですね。つけるならMを付けたいって思ってます。実際持ってるのはプレゼントしてもらったbird tile broochのJですけど。

松:私が好きなのは陶器ではないんですけど、silk screenのbirdsです。陶器の物も好きなんですけど、欲しい物はそれですね。

BW:陶器じゃなくて意外です。

松:あのいろんな鳥たちのイメージにぱっと見て惚れてしまったんです。

column04-image04

環境や仕事について

BW:みなさんとても和やかに作業されてますが、普段の工房の雰囲気もこんな感じでしょうか。

和:いつもゆるくこんな感じですね。

松:音楽代わりに付けてるテレビの出演者につっこんでみたり。

BW:楽しく作業されてるんですね。
では最後に、作陶する仕事に対する思いや姿勢等があれば教えてください。

和:難しいですね。私は丁寧にする事を心がけてます。効率よく仕事することも重要ですけど、時間が少しかかっても丁寧に。常にそこから、もっとこうしたら効率よくなるかなとか考えながらしています。仕事は何でもそうだと思いますけど。

BW:國友さんは前に窯元で働かれてましたが違いはありますか?

國:前は製品を作るという感じでした。サイズも形も決まっていて、ちょっとでも違うと金具が入らなかったり。そういう正確さを求められる所があったので、まるで機械のように好きじゃない物を作っていました。今は好きな物たちに囲まれて、それが出来上がっていく事が嬉しいです。

松:私は学生の時に学んだ事と繋がる事が出来ていて良かったなと思いますね、こういう陶芸の仕事は本当に少ないですので。関係ない仕事をしている大学の友達ももちろんいますし。

舞:ほんとそうですよね。陶芸の仕事を出来ていない人の方が多かったりしますよね。

松:陶器の制作に携われ、本当にいい環境で働けているなと思います。

PHOTO by 濱田英明

インタビューを終えて

スタッフの松本さんと國友さんはインタビューのあと産休に入り、少しの期間工房を離れてしまいましたが、二人ともまた子育てが落ち着いたらバーズワーズの工房に戻ってきたいと言っていたのが印象的で、この工房の雰囲気を物語っているようでした。それは作家である伊藤はもちろん、ここで働くスタッフたちの仲の良さが伝わってくるようでした。経験や感覚を頼りにひとつひとつの行程と向き合い、丁寧に生み出されるアイテムが手にした人のもとで美しくさえずってくれるといいなと改めて感じました。

INTERVIEW

バーズワーズの工房案内

鳥たちが生まれる場所

2009年、大阪の街中にある小さな工房にて夫婦二人で始まったバーズワーズ。その工房で現在、作家・伊藤利江とともに働く制作スタッフへのインタビュー。

陶磁器・原型師

見つめる型への想い

10年以上前に伊藤がひとつずつハンコを押して作り上げたカップ。そのカップをもとに生まれたPATTERNED CUPを共に作り上げてくださった原型師さんへのインタビュー。

シルクスクリーン職人

刷り込まれる職人の心

伊藤利江の描く手書きの余韻が残るよう熟練の技で版を作り、微細な色の指示にも真摯に対応してくださるシルクスクリーン職人さんへのインタビュー。

伊藤利江

鳥と陶芸

BIRDS' WORDSの全ての作品を生み出す陶芸作家・伊藤利江。アトリエにて作り出す彼女の作品との向き合い方や想い、人となりなどを感じていただけるインタビュー。